Eagleでユニバーサル基板の回路設計
この記事は,WMMC Advent Calender 2021
の3日目の記事です.
昨日はぱわぷろさんの動画…作ってみないか? - ぱわぷろ活動日誌でした.
動画編集ってできるといろいろ役立つ機会が多かったりすると思うので,私も1度ちゃんと動画編集について勉強してみたいですね.
さて,皆さん
普段回路設計はやりますでしょうか?私は,何かと研究室やらなんやらでなんだかんだ毎週のようにやっている気がします.
私もそうですが,どちらかといえば,プリント基板よりもユニバーサル基板の回路設計をする方が頻度が高いという方も多いのではないのでしょうか?
そこで,今回の記事は,Eagleを用いてユニバーサル基板の回路設計の方法について書いていこうと思います.
今回の記事は,電子工作はじめたての方にも役立つ内容となっていると思いますので,ぜひとも読んでいただけると幸いです.
では,今回の目次です.
はじめに
皆さん,普段回路設計する際はどんなソフトウェアを使用していますか?KicadやPasSなどいろいろありますが,学生の方だと高機能で学生ライセンスで無料で使用できるEagleを使っている方も比較的多いのではないでしょうか.
しかし,特に何もせずにEagleでユニバーサル基板の設計を行うと
マス目を0.1インチに設定して,拡大して……,あっ!穴2つ分ね!
といった風にめちゃくちゃ見にくい&配置ミスのオンパレードなんてこともしばしば…
これじゃあ,そもそも設計として良くはないのではないでしょうか?
そもそも良い設計とは何かって話にもなりますが,私が設計で一番必要なのは,要件を満たすこともそうですが,それ以上に他人が見ても明瞭にわかるような設計をすることだと思っています.
そこで,今回はEagleでユニバーサル基板の回路をわかりやすく設計するための方法について紹介していけたらと思います.
使用するユニバーサル基板を決める
皆さんはどのユニバーサル基板が好きですか?皆さんそれぞれよく使う基板などあると思います.私はもっぱらこれです.
今年度に入ってからは,なんだかんだ2週に1回くらいは使っている気がします.
今回は,この基板を使用する前提で話していきますが,それぞれ皆さんがお好きな基板でこれ以降の話を読んでいただけたらと思います.
デザインブロックを作る
"デザインブロック"?なにそれ?
という方も少なくはないのではないでしょうか.
実は,ちょ~~~~便利な機能なんです!
簡単に説明すると,Eagleで部品用のライブラリがあると思いますが,それの回路版と思っていただけると想像しやすいかと思います.
今回は,単純な話,このデザインブロックという機能を使用して,普段よく使う基板を登録して使いまわそう!というお話です.
では,やっとこさEagleに触れていきます.
プロジェクト作成
Eagleをの左側のメニューから,Projects->Projectsの中で右クリックして,NewProjectを選択します.
選択すると,新規のプロジェクトが作成され,プロジェクト名の入力が求められます.今回はBタイプのユニバーサル基板を使用しているので,プロジェクト名はUniversalBoardTypeBとでもしておきます.
作成出来たら,今作成したプロジェクトを右クリック->New->Boardを選択してください.
そうすると,このような画面が立ち上がったと思います
これでOKです.ただ,まだこのBoardファイルは保存されていないので,先に保存しておきましょう.ctrl+sで保存し,名前はプロジェクト名と同じUniversalBoardTypeBで大丈夫です.
ここで,使用するユニバーサル基板のデータシートを確認します.
https://akizukidenshi.com/download/ds/yajima/p3232_ae-b2-th.pdf
上記の各寸法を確認すると,mm表記となっていますがEagle上で触るとなると,inch表記できりがいい値のほうが嬉しいので,上記の寸法を多少いじって作成していきます.
この時点で若干製品との差が生じてしまいますが,これをしないとホール部分が微妙にずれて,後々大変なことになりかねないので,変更した方が今後のためです.
長辺:95.0[mm] -> 95.25[mm](3.75[inch])
短辺:72.0[mm] -> 72.39[mm](2.85[inch])
ドリル穴:Φ3.2 -> Φ3.175(0.125[inch])
端辺からドリル穴までの長さ:3.0[mm] -> 3.175[mm](0.125[inch])
ホールの径:Φ1.0 -> Φ1.27(0.05[inch])
この寸法に変更して作成していきます.
早速作っていきましょう!
Grid線の設定
まず初めにGrid線の設定をしていきます.中段左から2番目のGridを選択してください.
そうすると,Grid線の設定画面が開かれるので,次のように設定してください.
Display:On
Style:Lines
Size:0.025[inch]
Multiple:1
Alt:0.0125[inch]
設定し終わったら,OKを押すと先ほどまで真っ黒な画面にマス目が出てくると思います.(画像だと見えにくいかもしれませんが,実際に設定できていれば,はっきりとマス目が見えるはずです.)
これで準備はOKです.以下4マスで0.1[inch]ということを念頭に入れておくと,作業しやすいかもしれません
基板の作成
続いて,Dimensionの設定をしていきます.中段のLayerから20 Dimensionを選択して下さい.
そしたら,左のアイコンからLineを選択し,Widthを0に設定してください.線の幅を0にすることで,拡大縮小しても線の太さが変わらなくなります.
設定が終わったら,実際に線を描いていきます.
※以下の座標やサイズは自分で使用する基板に合わせて各々変更してください.
このDimensionのLayerは本来基板の外枠を設定するためのものですが,今回はプリント基板ではなく,ユニバーサル基板なので,ジャンパー配線の都合上,枠外に書いたりする書く方もいるかもしれないので,多少大きめにとっておきます.
(0, 0),(0, 3.05),(3.95, 3.05), (3.95, 0)を頂点とする長方形を書いていきます.描き終わったらescキーを押せば線の描画を終了できます.
以下のように囲まれた部分が濃い黒色になっていたらOKです.
続いて,ドリル穴を描いていきます.Layerは20 Dimensionのままで大丈夫です.
左のアイコンからCircleを選択し,Widthを0.001に設定してください.
(0.225, 0.225), (0.225, 2.825), (3.725, 2.825), (3.725, 0.225)を中心として,半径2マス半(0.0625[inch])の円を描いていきます.
マウスのみで円を描こうとすると,1マス単位でしか円の半径を決められないと思いますが,altキーを押しながらマウスをドラッグすることで,0.5マスずつ線が引けるようになります.今回は0.5マスになるように設定していますが,altキーを押した際にもっと細かく触れるようにしたい方は,Grid設定のAlt項目の値を小さくすれば,その値に応じて細かく触れられるようになります.
4つの円が以下のように描けていたらOKです.
続いて,Layerを変更して,基板の外形を描いていきます.
Layerを21 tPlaceに変更し,左側のメニューからLineを選択して,Widthを0.001に設定してください.
準備ができたら,(0.10, 0.10),(0.10, 2.95),(3.85, 2.95), (3.85, 0.10)を頂点とする長方形を書いていきます.以下のようにできていたらOKです.
続いて,ホールを描いていきます.間違いなく今回の記事で一番大変なのはここです.頑張ってください.(頑張ればそんなに大変じゃないです)
Layerを39 tKeepoutに変更し,左側のメニューからCircleを選択して,Widthを0.001に設定してください.
本来tKeepout Layerは部品の重なりを防ぐために使用するLayerですが,ユニバーサル基板では,基本的に使うことはないと思います(間違っていたらすいません)ので,今回はこのLayerを使用してホールを描いていきます.
データシートに合わせて横36×縦27(ただし4隅の各3点は除く)の960個のホールを0.1[inch]間隔で描いていきます.こうやって,実際文字に起こしてみて,あのちっこい基板に1000個近い穴空いてるんやなーと思うと,はぇーといった感じです(語彙力)
一個一個ホールを描いていくのもそれはそれで楽しいかもしれませんが(本当か?),大抵の人間は面倒だと思うので,ある程度書いてコピペで描いていきます.
(0.425, 0.225), (0.425, 0.325), (0.425, 0.425)の3点に半径1マス(0.025[inch])の円を描いてください.
描けたら,左側のメニューからGroupを選択して,先ほど描いた3つの円をマウスをドラッグして選択してください.3つの円が選択目よりも明るい赤で光っていれば選択で来ています.
そしたらctrl + cでコピー,ctrl + vで貼りつけのコピペ祭りの開催です.ぱっぱと960個のホールを描いてしまいましょう!
円の外形のx,y方向の間隔は2マスずつになるように注意しておいてください.ミスったままコピペして,修正が発覚すると普通にやる気なくします.
いっぱいコピペできたら選択しなおして,またコピしなおしてコピペすると効率的です.効率よくやれば2,3分かからずにでできると思います.
こんな感じになればOKです.
ここまでくれば,もう完全にユニバーサル基板ですね.ここまでくれば,別に終わっても構いませんが,このまま使用すると画面を凝視して,1,2,3…14,あれ15?どっちだ?なんて感じで穴の場所をも違えてしまうかもしれません.
そんな失敗を防ぐためにもマス目の座標の目印になるものを描いていきます.
Layerを21 tPlaceに変更し,左側のメニューからLineを選択して,Widthを0.001に設定してください.
設定が終わったら,5マスごとにx,y方向に線を引いていきます.このとき少々面倒ですが,ホールの円を貫通させないように線を引くと見た目がきれいになります.(画像上だと見えにくいかもしれませんが,拡大していただけるときれいに見えます)
線だけだと毎回"左から4本目と2マスだから…22マス目"という風にいちいち考えないといけないので,疲れてる時や眠い時そして酔ってるときには,九九をも違えてしまうかもしれません().そんなことがないように各線の端に番号を振っていきます.
Layerの設定はそのままで,左のメニューからTextを選択します.
選択すると,何をテキストとして挿入するか設定する画面が出るので,入れたいテキストを入れ,OKをおし,テキストを置きたい場所をクリックすれば,そのテキストを基板上に書くことができます.Sizeは0.04か0.05当たりがおすすめです.
すべての目安線に番号を振ったら,ついに!ついに!完成です!
ここまで一緒に作業してくれた方お疲れ様です.
では,さっそくこれをデザインブロックとして登録していきましょう.
左上のFile->Save as Design Blockを選択し,Save as…をクリックすると,名前を付けて保存する画面が出てくるので,名前を付けて保存してください.今回はUniversalBoardB.dblとして保存します.
これで,デザインブロックの登録は完了です.今開いているUniversalBoardTypeB.brdを保存して閉じてしまいましょう.
実際に使用する
Schematicの作成
プロジェクトを作成し,先ほど作成したデザインブロックを使用して何か回路を設計してみましょう!
Eagleの左側のメニューから,Projects->Projectsの中で右クリックして,NewProjectを選択します.
プロジェクト名は今回はTestProjectとでもしておきます.
作成出来たら,今作成したプロジェクトを右クリック->New->Schematicを選択してください.
今度は,このような白い画面が出てきたらOKです.ここに回路図を描いていきます.ひとまずこのSchematicファイルは保存されていないので,先に保存しておきましょう.ctrl+sで保存し,名前はプロジェクト名と同じTestProjectで大丈夫です.
今回は簡単のためにレギュレータを使った電源部分の回路のみを作成してみようと思います.
↓使用するレギュレータ
まず最初に左のメニューのAdd Partを選択して必要な素子を選択します.
今回使用したものは,
抵抗: rcl -> R-EU_ -> R-EU_0204/5
セラミックコンデンサ: rcl -> C-EU -> C025-024×044
電解コンデンサ: rcl -> CPOL-EU ->CPOL-EUE2.5-5
LED: led -> LED -> LED5MM
コネクタ: pinhead -> PINHD-1×2 -> PINHD-1×2(実装の際はXH等使用)
9V電源: supply2 -> +9V
VCC: supply2 -> VCC
GND: supply2 -> GND
と以下のトグルスイッチ(左),ポリスイッチ(中央),三端子レギュレータ(右)です
最後の3つに関しては,実はEagleには元からありません.ではどうしているかって?
自作です.
Eagleで設計していると自作でほしい部品のライブラリを作ることがよくあります.今回その自作の方法まで紹介すると,さすがに長くなりすぎてしまうので今回は割愛させていただきます.詳しくは以下のブログが参考になると思いますので,興味のある方は是非.
では,このように欲しい部品を出すことができたと思います.
これをきれいに並べて,回路を作成していきます.部品を移動させる際は,左メニューのMoveを選択して部品をクリックすると動かせるようになります.
このようにきれいに配置できたら,今度は素子の足と足をつないで回路図として完成させていきます.
左側のメニューからNetを選択してください.選択すると緑色の線が描けるようになるので,これを使って部品同士をつなげていきます.
つなげ終わったものがこちらです.
だいぶん回路図らしくなってきましたね.最後に使用するコンデンサや抵抗の値を入力していきます.左メニューからValueを選択してください.
選択できたら部品をクリックすると以下のような画面が出てくるので,コンデンサなら静電容量,抵抗なら抵抗値を入力します.
入力し終わり,完成したものがこちらになります.
これで回路図は完成です.続いて配線図を作成していきます.
Boardの作成
左上のGenerate/switch to boardをクリックしてください
クリックすると"Create from schematic?"と聞かれるのでOKしてください.
すると今回見慣れたこの画面が出てきます.
では,さっそく先ほど作成したデザインブロックを使用していきましょう!
まず,画面上にあるDimension layerの線(長方形を作っている黄色い線)を削除します.左のメニューからGroupを選択し,Dimension Layerの線を選択して,deleteキーを押してください.
そうすると,先ほどまでは,真っ黒な部分が中央部のみでしたが,全体が真っ黒になります.これでOKです.
そしたら左メニューからAdd a Design Blockを選択し,新しく出てきたWindowの先ほど作成したDesign Block -> UniversalBoardB->Boardを選択してOKを押してください.
すると,このように先ほど作ったユニバーサル基板がおけるようになるので,左下を十字線を目安に配置してください.
配置が完了して,ユニバーサル基板の部分だけが真っ黒になっていればOKです.
続いてGrid線の設定をしていきます.
先ほどデザインブロックを作成した際と同じ設定にすると,扱いやすいと思います.
Display:On
Style:Lines
Size:0.025[inch]
Multiple:1
Alt:0.0125[inch]
Grid線の設定が完了したら部品を配置していきます.
schematicで行ったのと同様に左メニューのMoveを選択して部品をクリックして動かしてください.
部品の配置が完了したら,配線をしていきます.左メニューのRoute Airwireを選択してください
選択できたら中段の部分を以下の図のように設定してください.
LayerのTopを使用する際は表配線やジャンパさせる際などに使用するとよいと思います.
設定が終わったら,各部品の足をつなげていきます.
このように各部品の足をつないでいた細い黄色い線がなくなれば,配線は完了です.
お疲れ様でしたー!
実はこの配線図"はじめに"で乗せていた配線図と全く同じです.
上記の二つを比べると,デザインブロックを使用したことで,格段に見やすくなっていることと思います.
後は,これを見ながら半田付けを頑張りましょう!
さいごに
かなり長い記事になってしまいましたが,ここまで読んでくださった方,本当にありがとうございました!
この記事が何かしらの役に立てたのなら幸いです.
明日はジャッジ―さんの「GAS便利だった備忘録」です.
GASを活用すれば,いろいろ生活が便利になりそうですね.ぜひとも読むのが楽しみです!
では,また!